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年末年始の事 ⑤

職場に連絡を入れ、お休みを頂きましたが、
父の病室に戻るのをワタクシは躊躇しておりました。

何故なら、
父はワタクシの顔を見ては、先ずは死を懇願するからです。
ただ、前日から寝ていない母にずっと診てもらうわけにも行かず、
なんとか話をずらし、生き長らえさせようとしました。

話をずらすと、幻覚の話を続けていく父親。

ずっと動物の話を続ける父。

腕が痛いのは、
「狼にやられた」から。
「ずっとこっちを狙っている」そうです。

心電図や、椅子の位置をずらして身を隠せ、
と指示して来ます。
素直に従い、
「これで大丈夫でしょ?」
と、ワタクシ。

どこの山に入った夢を見ているのだろう?
と、ずっと思っておりました。


昼近くになると、伯父がやって来ました。
もう使う事はないであろう帽子を持って。

すると、
今まで幻覚を見ていたはずの父が
伯父に握手を求めます!

伯父も驚きつつもその握手に応えます。

「お母さん、ビール!」

もう病院にいる事もわかってないようです。

突然の父の言葉に、
母が驚きながら
「ここは病院だよ」
と諭しますが、

「あの時、話合わせて家にいるような体で話せばよかったなぁ。」

と、今はちょっぴり後悔しているようです。


とにかく、父親は実の弟が来た事に喜んでおりました。
一昨日も会ったはずなのに。


この動物の話や、
伯父に会えた時の嬉しさが
一つの線になる様な話を
後に父親が話し始めます。

父はずっと同じ幻覚を観ていたんだな、と。




母は結局眠る事なく父につき、
バナナを食べさせたり
パジャマを替えるのを手伝ったりしていました。

ただ、やはり母の体調も気になったワタクシは、
母に少し休む様に伝えます。

「わかったよ。じゃあ唐揚げ買ってあるから食べさせてあげて」

と、一旦病室を出ます。

「この状態で食べれるかな?」

と思ったのですが、

父はしっかり食べてくれました!
生きる意志があると、
しっかり感じさせてくれました!

しかし…


ワタクシが父親に物を食べさせるのは、もちろんこの時が最初で最後。

そしてそれが、父親の最期の晩餐となりました…。


ワタクシはその日の午前中に、
担当の先生とお話をさせていただいてました。

「今だけ苦しまない様に眠らせて、その間に肺炎が治る様な事はないでしょうか?」

「…それは難しいと思います。
そして、ご本人様は目覚めた時に、
(まだこんなに苦しい思いが続くのか!?)
と絶望を感じてしまうかもしれません。」

「…では、どの様なタイミングで鎮静剤を打つべきですか?」

「それはご家族の皆様のお考え次第です。
苦しんでいても、最後まで生きていて欲しいと考えるご家族は打ちませんし、
少しでも苦しまない様にと考えるご家族でしたら打つでしょうし。」

「今の父の状態は…」

「正直、相当苦しいと思います。
例えるなら…、今はずっと溺れている様な状態です。」

「…そうですか。」

「ただ、ご家族の気持ちもありますので、会わせておきたい人がいるなら今日中に呼んだ方がいいと思われます。」

「わかりました。」



ワタクシはこのやりとりがあったので、
父親が眠った時に鎮静剤を打とうと考えておりました。

しかしなかなか眠らない父。
更にバナナや唐揚げまで摂っております。

母親はそんな父を見ておりますので、
鎮静剤を打つ気持ちなどサラサラなかったでしょう。

しかしワタクシは
「あまり苦しんでない今、打った方がいいのかもしれない」
と思っておりました。

そこに看護師さんがやって来ます。

その看護師さんに徐に話しかける父親。

「国と国との争いだから…」

え?!

「わかるか?国と国との争いだから仕方ないんだ…。
しかし二十人かの人間がいたんだぞ?
今何人だ?
〇〇(ワタクシの苗字ね)家は何人残ってる?」

なんと戦争に行ってる幻覚を観ていたのです!

父親は昭和18年生まれなので、戦争には行っておりません。
それなのに父親の頭の中では
自分の身体の苦しみを
「戦争に行ったから苦しい思いをしている」
と、置き換えていたのです!

伯父に会えて喜んだのも
「おぉ、無事か?生きていたか!」
と言う事だったのでしょう。

狼を筆頭に動物がこっちを狙っていると話していたのも、
戦場のジャングルの夢を観ていたのだと思います。

一体なんでそんな夢を…

それくらい苦しかったのかな…?
と、考えさせられてしまいました。


看護師さんが部屋を出た後、父はようやく眠り始めました。

ワタクシはもうここで鎮静剤を打った方が良いと考え、
母に相談します。

しかし母は驚いた様子。
食事も摂っていたのになんで眠らせるの?
と言った感じでした。

その母親の姿にまた決断を鈍らせてしまったワタクシ。
そうしていると病室からワタクシの名前を呼ぶ声が!

「〇〇(ワタクシの名前ね)〜っ!!」

急いで病室に戻ると、

「早くしろっ!早くしろって!!」

もの凄い苦しそうな表情で、ワタクシにそう叫ぶ父!

「わかった、わかったよ!」

すぐに看護師さんを呼び、鎮静剤を用意して貰います。

その間ずっと
「早くっ!早くやれーっ!早く!」

「わかった、遅くなってごめん!本当にごめん!」


多分、父は幻覚の中で、動物なのか、敵なのか、何かを撃とうとワタクシに指示を出していたのだと思います。
しかし、それイコール身体の苦しさだったのだとも思うのです。

そんな中、鎮静剤の準備が遅れてなかなか看護師がやって来ません!
その間ずっと苦しませてしまいました。

叫び続ける父親に、
ワタクシも今までの感謝の言葉、
闘病生活での頑張りへの尊敬の念、
色々泣きながら話しかけました。

ちょうどその頃、
小学生生活最後のサッカー大会に出ていた
子供を連れて嫁がやって来ました。

子供の前でしたが、
情けない事に
涙は止まりませんでした。

「ああーっ!もうダメだ、遅いっ!」

「遅くないよ。大丈夫。もう少しだから!」

「大丈夫じゃない、もうダメだ、遅い…」

その言葉に、何故か笑ってしまい
笑いながら
「遅くないよ!」
と話すと、

「お前なに笑ってんのよ?」

との返事が…。

ドラマの様な感動する会話の連携は出来ませんでしたねf^_^;


ようやく準備が整い父親の身体に鎮静剤が打たれます。

父親は何か安心した様な表情を浮かべ、
ずっと外したがっていたマスクを取ります。


そして…

人差し指と中指を立てます。


最後の最後までタバコが吸いたかったんでしょうなぁ〜。

この1ヶ月間、ずっと我慢していたタバコを渡します。

もちろん、火はつけられませんが、
美味しそうにタバコを口に加えました。

火がついてないので不思議そうな顔をしながらも、

「もう一本」

とおかわり。

それが父の最期の言葉となりました。


鎮静剤を打ってしまったので、
もう母親も大丈夫だろうと、
翌日は仕事もあったので
その日は帰りました。

しかしその日の夜、
父親がまたマスクを外そうとして眠れなかったと言います。

担当の先生の話だと、
「意識があるわけでなく、無意識に邪魔だから外そうとして動いているだけ」
だそうです。

しかし、その後また数値が落ち始め昼頃には息が止まると言われたそうです。

その日も仕事を早退し、病室へ。
「死目には会えないかな…。」
でも、ワタクシは既に昨日で
父とお別れしたと思っておりました。

病室に着くと、
もうダメだと思われましたが、なんと持ち直したとの事。

「ビックリしました。多分、元々の心臓やその他の臓器が丈夫だったのだと思います。」

と、看護師さん。


本当、お前はプロレスラーか?!って!

タバコさえもっと控えめに出来てれば、もっともっと長生き出来てた筈だよなぁ〜…。


結局、最期は眉間にあった苦しそうな皺もなくなり、
非常に穏やかな表情で、
ゆっくり、ゆっくりと、
呼吸が少なくなり、
息を引き取りました。


「令和2年 1月20日17時 御臨終です。」


前日にお別れを済ませてると考えていたワタクシは、
この時、
「本当にお疲れ様でした…。」
としか思いませんでした。

本当に凄い頑張ったと思います。
もうゆっくり休んでくれって感じでした。

父親に対して、色々と後悔している事はあります。
親孝行なんてまるっきしでしたから。

ただ、最期にずっといれてよかったと思っております。


最後に、
ワタクシの小さい頃の父の写真を貼って終わりにしたいと思います。


ありがとう、お父さん。

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テーマ : 最近の出来事 - ジャンル : 日記

コメント

BKっち、ありがとう。

先日はありがとうございました。
そして、こんなに詳細に大切な大切な本当に大切なことを記していただいてありがとうございます。
ことさらに美化して飾ることない、素直なBKっちの心情が余計胸に響きました。

私もこれから遠くない未来に同じ日を迎えると思うのですが、人間の生命の力というものが本当に伝わってきました。

でもね、最後の画像見て…若き日のお父さん、BKっちの横顔とおんなじじゃないですか!! これ見たらもう言葉がないです。
もう一度、ありがとうございますと言わせて下さい。
そしてお父様が道に迷うことなく天国へ辿り着きますように陰ながらお祈りします。

心よりご冥福をお祈り致します。

Re: BKっち、ありがとう。

紫レガさん、コメントありがとうございます!

> 先日はありがとうございました。
いえいえ、こちらこそありがとうございました。

> そして、こんなに詳細に大切な大切な本当に大切なことを記していただいてありがとうございます。
> ことさらに美化して飾ることない、素直なBKっちの心情が余計胸に響きました。
なんも、お礼を言われるようなこと書いてませんよ^ ^
今回の事は出来るだけ忘れないうちに記しておこうかな、と。
人様にお見せするような事でもないんですけど、日記は書かないからこっちになってしまいましたね^ ^

> 私もこれから遠くない未来に同じ日を迎えると思うのですが、人間の生命の力というものが本当に伝わってきました。
気づかぬうちにお互いそういう年齢になってしまったのですね。
もちろんもっともっと早くに亡くされる方も沢山いらっしゃいますがね。

> でもね、最後の画像見て…若き日のお父さん、BKっちの横顔とおんなじじゃないですか!! これ見たらもう言葉がないです。
> もう一度、ありがとうございますと言わせて下さい。
そうですか?
今回遺影の為、改めて父の写真を沢山見たのですが、
父はオラと違い結構なイケメンなんすよね。
顔小さいし、鼻筋通ってるし、当時としては背が高いし。
多分横顔から見た目元だけなんでしょう、似てるのは(^^;

> そしてお父様が道に迷うことなく天国へ辿り着きますように陰ながらお祈りします。
> 心よりご冥福をお祈り致します。
本当にありがとうございます!
あっという間に49日になりますねぇ〜。

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